「明日の空」パブリックアートの設置
野見山暁治のパブリックアートが飯塚市体育館に設置されました。
落成式が2023年4月15日に行われます。
「明日の空」
設置場所:飯塚市総合体育館 エントランスホール
製作:クレアーレ熱海ゆがわら工房
素材:陶板レリーフ
作品に関して:飯塚市内の小学一年生を対象にした、自分の夢、飯塚市の好きな場所、
自分の好きなスポーツをテーマにした絵画募集を行いました。総勢1,098枚の応募作品から、
野見山先生が選んだ面白い形をした40枚の作品を元に、野見山先生がインスピレーションを
得ながら、粘土で造形制作を行い、陶板レリーフに仕上げました。このプロジェクトは、
小学生と野見山先生のコラボレーションによって生み出されました。
野見山暁治 コメント:
タイトル「明日の空」
川っぷちな、草茫々と茂っていて、流水はどこから来るのか、よくもと思うほど、
どす黒く横たわっていた。
泳ぐたび母に叱られる。いくらトボけても、瞼や小鼻のふちに炭の粉がうっすらと
残ってしまう。川っぷちの泥を、団子のように丸めて陽に晒していると、
石炭のように燃える。ぼくたちは、ネンボウという、小さな棍棒を地面に突き
立てたり、コマを回したり、天に向かって凧をあげるのに夢中だったり。
女の子は、何をやっていたのか、仲間うちで仲良く遊んでいたので知らない。
小学校に入るようになって、はじめて洋服を着せられた。それまで着物だったので、
両脚に分かれているズボンが似合わなかったら、どうしよう。僕は気取り屋だ。
近くの街の世界展で、西洋の子供たちの絵を知った。川も魚もボートも、きちんと
輪郭で示されていて、その枠をはみ出さないように、色が塗り分けされている。
犬も猫も行儀がいい。西洋人みたいだ。
ぼくたちの絵は、緑の葉っぱが地面と交わり、野原の花と一体になって、やけに大きい。
僕は今、お爺さんになっている。故郷の飯塚に、体育館が建つ。
自分が育った小学校の皆さんの絵を、いっぱい描いてもらい、その中から選んで、
粘土で型取りして、体育館の壁いちめんに貼り付けた。
故郷の後輩たち、いつの間に西洋の子供たちと同じ線、同じ色合い、区別がつかん。
あの日本人の泥くささが消えている。
もう世界のどこに居ても、人間の生活は地球規模で進行しているのだろう。